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〔キャラクター名 ガオウ〕
獣人の姿をした研究者。
魔物に関する様々なことを研究しており、実験に必要な材料は力尽くで手に入れる豪快っぷり。
とある理由があり、滅多に人間の前に現れることは無い。
元は人間だった彼が、獣人の姿になったことには深い訳があり…。
好き:実験、厚切りステーキ
嫌い:機械の操作
ガオウは魔物のルーツを主に調べていた研究者であり、魔物の分布図や生態を研究して発表することで大衆から認められていた。
研究のためなら魔物の巣であろうと容赦なく立ち入る彼は「巻き込みたくない」という理由で仲間を持つことは無かった。
ガオウはある日、遠い大陸で人間が魔物に改造される実験が行われていること、そしてその実験体となった人間たちが次々と命を落としていることを耳にする。
「人間を魔物に改造する」ということに何とも言えない危機感を感じたガオウは、一人その大陸に向かう。
数か月かけて、その実験が行われているという土地に訪れたガオウの前には、体の一部分だけが獣のようになり苦悶の表情で息絶えている亡骸が無数にも転がっていた。
息絶えてからかなりの時間が経っているようで、簡単な治療ならできるガオウも、彼らに対して成す術がなかった。
その場所から少し歩いていると崩れかけの廃屋が並ぶ集落のような場所に行きついた、そしてガオウはふと違和感に気付いた。
「人がいない」
ガオウが旅の道中で聞いた話によると、ここは内戦が起きている場所であり、その争いの兵器として人間を魔物に改造する実験が行われているとのことだった
「既に争いが終結しているのか」
ガオウがいろいろなことを考えながら歩いていると、またしても亡骸が目に入った。
そして亡骸の数は一つではなく、建物内にもあることに気付く。
巨大な爪で引き裂かれたような傷が目立ち、さしずめ魔物にでも襲撃されたようである。
「そこで戦争があった」
それを実感しながらもガオウは集落の奥に見える巨大な建物に歩みを進めた。
その建物内では怪しい液体のタンクや割れた試験管が散らばっている。
ここが目的地である人間を魔物に改造する研究を行っている…いや、研究を行っていた施設だろう。
先ほどの集落と同じく、切り裂かれたような傷を負って息絶えている者が無数に倒れている。
本来白衣であったはずの服は血で茶色く染まっている。
無数にある研究室を調べていたガオウの前に狼の姿をした魔物が現れた。
反射的にガオウは拳を構える。
恐ろしい風貌の魔物であったが既に衰弱しているようで、四肢の一部は欠損している。首にはきつくチェーンが巻かれており、魔物は憎悪に満ちた表情でただガオウを睨んでいた。
ガオウは魔物の前に携帯食として持ってきていた大判の干し肉を差し出した。
魔物はペロリと肉を平らげると、ガオウへの警戒を解いた。
魔物はぎこちなく歩いて研究室から出て行った。
一息おいてからガオウが魔物の後を追うと、ひと際厳重に戸締りされている扉が現れた。
扉の前でその魔物は息絶えていた。
力尽くで扉を破壊し、研究室に侵入したガオウの前に異様な光景が広がる。
一部が割れた分厚いガラスの囲いの中に先ほどの魔物と同じ種の魔物の亡骸が何体も鎖に繋がれている。
先ほどの魔物はまだ力が残っているうちに辛うじて脱出できたのだろうか…?
他にも見たことのない器具が壁側に並んでいる。
薬のようなもののサンプルなども保管されており、おそらくここがメインとなる研究室なのだろう。
サンプルが保管されている液体の近くには「1/102」と書かれているメモが置かれていた。
薬の調合に関するメモだろうか、いやそれならこんな細かい比率で記載せず液体や物質の分量などで記載するだろう。
ガオウの脳裏に嫌な予感がよぎった。
ここに来る道中で見た「体の一部が獣のようになっている亡骸」そして「鎖に繋がれた獣の亡骸」
ここでは人間と狼に似た姿の魔物を合成する事件をしていたのではないだろうか…。
最初に見た異形の亡骸の数々は実験体となった者達だった。
なら、集落やこの建物内の切り裂かれた傷の亡骸は…?
さっきの魔物に襲われた…?
まさか、人間と魔物の合成に成功して人の知性と魔物の凶暴さを持つ者が生まれてしまったのか…
ガオウは唯一残されていたサンプルの薬品を持ち帰って研究するために厳重に保管し、研究所に火を放った。
また数か月かけて元の大陸に戻ってきたガオウ。早速、薬品の研究に着手する。
「1/102」というあのメモ。
ガオウは102人にこの薬品を投与して1人に対して効果が出た、あるいは望んでいた結果を得ることができた数だと考えた。
なかなか薬品の研究を進めることができずにいた、ガオウのもとに「星の意志の教団」という魔水晶を管理する団体から魔水晶についての研究を求められる。
ガオウは魔物の研究を専門に行っていたが、どうやら教団は各地の研究者に手当たり次第に魔水晶の研究を依頼しているらしい。
「結果が出なくてもいい」という言葉を聞き、仕方なく承諾したガオウに布で包まれた魔水晶の欠片が渡された。
1cmほどの小さな欠片だったが凄まじい力を感じる。
あの薬品の研究はいったんやめて地下室に安置し魔水晶の研究に手を出し始めた。
最初は興味がなかった魔水晶の研究だったが、その不思議な魅力に包まれガオウは魔水晶の研究にのめり込んでいった。
ガオウが研究に明け暮れていた頃、ガオウの研究所に魔物が襲撃に現れた。
魔物の狙いはガオウの命でも実験に関する情報でもなく、魔水晶の欠片であり戦闘を得意としていたガオウも強大な未知の魔物に苦戦を強いられていた。
命からがら戦線から逃れることのできたガオウ。
このまま逃げ続けたところで、いつかは自分の体力が尽きてしまう。
ガオウは賭けにでることにする。
どうせこのままでは「死」が待っているのだから、研究者として最後は自分の体を実験台にして死んでやる。
ガオウはそう考えて、魔水晶を握りしめながらあの薬品を飲み干した。
薬品の使い方が正しかったのかは分からない、時間がない危機的状況の今、ガオウができることはそれしかなかったのでだ。
想像を絶する痛みが四肢を駆け巡る。
体が裂けていくようなその痛みにガオウは雄叫びを上げた。
気が付くと、先ほどまで自分を襲っていた魔物が傷だらけの無残な姿で倒れている。
その傷は以前あの大陸の集落で見た、亡骸にあった傷とよく似ている。
ふと自分の手を見ると、それは人間の手ではなかった。
まとわりついた血をズボンで拭うとそこには獣のような手があった。
傍には光を失った魔水晶の欠片が落ちているのだった。
なぜ、あの薬品が自分に適用したのかはわかないが、人の姿でなくなったガオウは人前には姿を現さないようになり、いつしか世間では魔物の襲撃によって命を落としたとされた。