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シリーズ 妖怪の世
〔キャラクター名 鎌鼬 影尚(えいしょう)〕
「鎌鼬(かまいたち)」という種族の妖怪。
尾が鎌状になっており、左右の腕からも鎌が生えている。
腕の鎌は妖術によって大きさを変化させることができる。
暗殺や諜報活動を得意としている、いわゆる「忍者」のような働きをしている。
鎌鼬族は同族と群れで助け合って生きるのが常。
人間の世から少し離れた場所にある森で鎌鼬族の妖怪たちが暮らしていた。
その中に生まれてすぐから狂暴だった者がいた。
その者は気に入らないことがあると自慢の鎌で辺りかまわず斬り裂くため、傷を負わされる者が現れたり住処を壊される者がいたりと困り果てていた。
その鎌鼬は関わるともれなく鋭い傷を負わされることから「鋭傷(えいしょう)」と呼ばれていた。
ある日、鎌鼬の森に刀を腰に下げた鬼が現れた。
鬼族は妖怪の中でも狂暴。
「自分たちをとって喰いに来たのだ」「捕らえられて家畜にされる」
恐怖に怯えながら鎌鼬たちは必死に姿を隠していた。
鎌鼬たちは仲間が全員避難できたか確認するため、仲間の数を数えていった。
「一匹足りない」
しかし、鎌鼬たちは焦ることは無かった。
そこにいなかったのは、あの「鋭傷」だからである。
「あんな狂暴なやつは鬼に殺されてしまえばいい」
鎌鼬たちは物陰でそう思っていた。
とうとう寝床で昼寝をしていた鋭傷は鬼に見つかってしまう。
只ならぬ気配に鋭傷は目を覚ます。
目の前には見たこともない未知の生き物がこちらを見ている。
鋭傷は咄嗟に鎌を準備し戦闘態勢を取った。
次の瞬間すぐさま鎌で斬りかかる。
しかし、鬼は巨体に似合わない素早い動作で鋭傷の攻撃をいともたやすく躱す。
一向に敵は攻撃してくる気配はなく、鋭傷の空振りだけが数十秒続いた。
息を整え、渾身の一撃を腕を振り上げようとする鋭傷。しかしその腕は上がらなかった。
いつの間にか間合いを詰められており、目の前の敵が剛力で自分の腕の鎌を手のひらで摘んでいるのだ。
この時、鋭傷は生まれて初めて「敗北」というものを感じた。
今までは抵抗しない同族に一方的に攻撃するばかりで、他の鎌鼬はいつも離れた場所で自分の存在を警戒している……仲間からも完全に嫌われてしまっていた鋭傷。
誰かと面と向かうことなど、生まれてこの方一度も無かった。
敗北感と同時に、どこか今まで感じたことの無い満足感を感じていた。
「俺は鬼の大嶽丸」
「おまえ、名前は?」
目の前の奴はそう言った。
「えいしょう、周りの奴はそう呼んでる」
鋭傷は震えた声で応えた。
「えいしょう?…そうか影尚か…いい名前だな」
「妖怪の楽園を作るための場所を探しているんだが…お前も来るか?影尚」
敗者の自分が首を首を横に振ることなどできまい。
影尚はその言葉の意味もよく分からないまま首を縦に振った。
数十年後、三大妖怪により妖怪の世が安寧の地になった頃
影尚は大嶽丸から信頼される配下として妖怪城にいた。
狂暴だった性格はすっかり更正しており、部下からも信頼されている。
妖怪の王「大嶽丸」配下として妖怪の世の平和に貢献する。